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【種別】 キャラクター 【所属】 トリステイン 【解説】 フルネームは『ルイズ・フランソーワズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』 ヴァリエール公爵家の三女。 【備考】 ☆ツンデレ。つるぺた
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「てんくうちゅうしんけん?何それ?」 ロム・ストールの発した聞いたことの無い単語を不思議に思うルイズ 「悪を断ち、弱きものを守る正義の拳法、俺は亡き父の遺言によりそれを用いて旅を続けていた」 「ふ~ん・・・、ってそんな話をしている暇はないわ!今すぐ契約するわよ!!」 「契約?何の?」 「主と使い魔の契約よ!今から貴方は私の使い魔になるのよ!」 ルイズは力みながら説明した 第1話 新たなる大地!その名はハルケギニア! 「つまり使い魔とは君たち魔法使いのしもべになること、俺は君に召喚されたから君の使い魔として契約をしなければならない」 「そうよ、物分かりが早くて助かるわ、では早速・・・・」「断る」 「んな!何を言っているの!貴方は私に」 「君達魔法使いが伝統に従うように俺には亡き父の遺言に従って悪を討つ旅を続ける義務がある。それを途中で止めるわけにはいかない」 「そーいうことなら私も言うわよ!召喚のやり直しは出来ないのからもう私には貴方に使い魔になってもらうしか道がないのよ!」 ロムの言い分にルイズは真っ赤な顔をして反論する ルイズは思っていなかった まさか貴族である自分が平民(?)であるロムからここまで拒絶されるとは さらに周りの見回すと既に契約を済ませた級友達はそれぞれ使い魔の自慢話をしつつルイズをニヤニヤしながら見ている 当初の予定なら今頃自慢話の中心にいるのは自分のはず・・・・ しかし現実はそうではなかった ルイズの涙腺は爆発寸前だった (気の毒だが俺は一刻も早く仲間達の戻らなければならない。) ルイズに同情しつつ、ロムは手を空に掲げた (彼女の話からここはクロノスではない事は確かだ。だが彼女は俺をこの世界に呼ぶ事が出来た) (っという事は戻る事も可能なはずだ・・・・、よし、剣狼よ!我に導きを!!) しかし何も起こらない (ばっ・・・馬鹿な!剣狼が現れん!?) 父から受け継いだ狼の紋章を持つ剣、剣狼が今まで自分の下に現れないとはこれまでに無かったのだ さすが多くの修羅場を乗り越えたロムもこれには焦った 「聞きたい事がある」 「何よ!」 ロムは少し青い顔でルイズを見る、ルイズは再び目に涙を溜めていた 「帰る手段はあるのか」 「無いわよ!サモン・サーヴァントは呼び出す事しか出来ないのよ!」 「・・・・本当か?」 「本当よ!嘘付いてもしょうがないでしょ!」 少し思考した結果・・・・ 「わかった、君の使い魔となろう」 「ほっ本当!?本当に本当!!?」 「ああ、ただし帰る手段が見つかったら必ず帰る、それまで俺が使い魔としての働きをする」 ルイズは片手で涙を拭い、胸に手を当て息を吸った 一度は閉ざされたと思われた道に光が差したのだ・・・・・・ 「ではコントラクト・サーヴァントを始めるわよ。そこに座りなさい」 ロムは言われるままに膝を地に付ける、するとルイズは目の前に杖を掲げた 「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ド・ル・ブラン・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」 (成る程、これが契約か・・・・これで俺は、ってな!?) ルイズは呪文を唱えたあとロムに顔を近づけ、口付けを交わした 「ふう、これで契約は終わりよこれであんたは私の使い魔になったわ」 「・・・・・・・・」 唖然としたロムはルイズの顔をじって見ていた その透き通っている目に思わずルイズは頬を赤らめる 「なっ何よ、ひょっとして照れているの?しょ、しょーがないじゃない!私だって好きでやってるわけじゃないんだから・・・・」 「いや、女に迫られるのは慣れているがいきなり口付けをするのは初めてだと思ってな。意外と大胆なのだな」 ルイズの顔が全面真っ赤になる 「仕方がないでしょこれが儀式なんだから!それより今からあんたは私の使い魔よ!!」 「ああ、出来る限り努力しよう・・・む?体中が・・・・あ、熱い!!」 ロムの左手の甲から文字が浮かび上がる 「それは使い魔のルーンよ、使い魔になった証拠よ」「ふむ、珍しいルーンだな、どれもっと良く見せてくれないか」 コルベールがロムの左手に自分の手を添える、するとコルベールが段々悩ましい顔になっていった (こっこれはどういうことだ!?この平民何かおかしい・・・・!これでは・・・・) 「もういいか?」 「あ・・・・、すっすまん、では皆、教室へ戻るぞ」 ギャラリー達が宙に浮き始め、建物の中へと入っていく。 色々話している声があったがもちろんそれはルイズの事であった 「ルイズの使い魔にはあんな平民がお似合いだな」 そんな声が聞こえた気がする 「なんだ、マスターは飛ばないのか」 「うるさい!さっさと行くわよ!全く、何で私の使い魔が平民なのよ!」 ルイズはまだ怒っていた その夜・・・・ ルイズの部屋にてロムは窓から夜空を見上げる 「ふむ、この世界の月は2つあるのか」 「そんなの当たり前でしょ」 「俺の世界には太陽が2つあるが・・・・」 「太陽が2つ!?暑くないのそれ!!?」 「いや、それほどでもない、環境はこの世界とはあまり変わり無い。それに俺が仲間と共に旅をした場所には全てが氷でできた大地もある」 「あんた今までどんな生活してきたのよ・・・・」 ルイズは呆れながらも言う ロムはルイズに自分の世界の事を話していた。自分の事や、世界に住人の事、そして仲間達と共に旅をしていたこと 「要するに貴方の世界の住人は貴方の様に体を鋼で包み、それ所か別の物に姿を変えることができるのね。じゃあ貴方も姿を変えることができないの?」 「できん、俺はクロノス族に属している。クロノス族は人間の姿が基本だ」 (何よそれー!平民の使い魔を連れているなんて馬鹿にされないためにずっと姿を変えさせておこうと思っていたのにー!) ルイズがぶわぶわと長い髪をかきあげる ロムが再び口を開ける 「しかし君を悪人から守ることはできる。天空宙心拳は人を活かす拳だ」 確かにロムは見掛けかしてとても強そうだ 顔立ちも昔家に招待された高名な騎士と似ている しかしその騎士との決定的違いは魔法が使えないという事 もしも悪人が魔法を使ってきたらあっという間に吹き飛ばされてしまいそうだ 「まぁ期待しておくわ、それよりもあんたにやってもらうことは沢山あるわよ!覚悟しなさい!」 「ああ」 ロムがこくりと頷く 「じゃああんたの寝床はそこ」 ルイズが指を床にさしたあとロムに毛布を渡す 「ああ、野宿には慣れている」 それからブラウスのボタンを一つずつ外していき、下着姿となった 「なっ、なにをしているんだ!」 ロムがすっとんきょうな声をあげる 「寝るから着替えるのよ」 「何故人前でやる!」 「別に、使い魔に見られたって何ともないわ」 迫られるのは慣れていると答えたが元々女性自体に慣れてないロムは流石にルイズの行動にまたもや唖然とした 「それとこれ朝までに洗って置いてよね」 っと言って純白の下着類を渡す 「少し、夜風に当たって来る・・・・」 ロムがドアノブに手を掛ける 「あらそう、言っておくけど帰るなんて事は考えない方がいいわよ。明日から雑用三昧だから、それじゃおやすみ」 一度召喚された場所へと戻るロム 「あの時剣狼は確かにこの手にあった、っということは剣狼もこの世界にあるはずだ。」 自分の手のひらを握りしめる 「バイカンフーを呼べば次元を貫いて下の世界へ戻れるはず、きっとクロノスへ戻ることができる」 空に浮かぶ2つの月を見上げる 「ジェット、ドリル、ジム。俺がいなくなった世界で何を思っている?」 共に父が印した狼の印を探す旅を始めた仲間達、夜空を見ていると彼等の顔が浮かび上がる 「レイナは今頃、泣いているのか?」 自分に良くくっついていた可愛らしい妹が大きな月に浮かび上がる 「待っていろ皆、俺は必ず帰って見せる」 そっとドアを開けると薄暗いランプに肢体を照らしながらすやすやと眠るルイズがいた 「だが、俺はこの娘を守る事が・・・今後の日課だな」 ルイズをレイナに照らし合わせながらロムはランプの火を消した おまけ 金髪の少年がセミロングの髪の少女と共に学院のベランダに出ていた 「確かに君の言う通り今日の夜空は星が多くて美しい・・・・、素晴らしいよカレン」 「ありがとうございますギーシュ様・・・・」 カレンと呼ばれた少女は両頬にそれぞれ手を当ててうっとりしていた 「おお、今蒼い流星が流れたよ」 「私も見えました、まるで妖精が夜の運河を滑るように・・・・」 「カレン、夜が深くてもこの星の輝きの下なら遠く都を探すことができるよ。それに、今は君の顔をしっかり照らされていてとても美しい・・・・」 「ギーシュ様・・・・」 二人は互いの唇を合わせようとする、すると下の方から足音が聞こえる 「誰だ?二人の時間に割り込んで来た無粋な者は」 下を見ているとそこにいたのはあのゼロのルイズが召喚した平民であった (全く、貴族の楽しみに土足入ってくるとは。これだから平民は・・・・) 「あの方・・・・素敵」 (な、なんだってー!) 「あのしなやかな体付きを思わせるスマートな鎧、キリッとした目付き・・・・素敵ですわ・・・・。でもあの人はあのルイズの使い魔で平民・・・・ああ、何この気持ち!?これが恋心!?」 拳を握りしめて男を睨み付ける (あの男平民でありながらこの僕から(何人もいる)ガールフレンドを誘惑するなんて・・・・、・・・・この代償、高くつくよ・・・・) しかしその後酷い目にあうのは自分だったりする・・・・
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ルイズと幽香は他者と一歩送れて朝食の席を立つ。 これから、幽香を入れての、初めての授業である。 「・・・むきゅー。この本、興味深いわ。ここの世界の魔法も会得して、 絶対に魔理沙をぎゃふんと言わせてやるわ」 第4話 こんどこそ すごい 本領発揮 他の生徒から数分遅れてルイズと幽香が教室に入る。 すると、赤い髪をしたスタイル抜群の女性がルイズの姿を認めると、近づいてくる。 「あらルイズ、おはよう」 「・・・おはよう、キュルケ」 ルイズは心底嫌な顔を、キュルケは悪戯を楽しむような顔をしている。 「この人が貴方の召喚した使い魔?」 「そうよ、幽香こそ「使い魔じゃないわ。あくまでルイズとは対等のつもりよ」ってちょっと」 キュルケの質問に、ルイズが自慢げに答えようとしたところ、幽香の口から驚きの言葉が漏れた。 「ち、ちょっと、前に一応ではあっても敬おうって言ってたじゃない」 「いや、なんかやっぱり慣れない事はするもんじゃないわねって事で」 「余りにも酷いわ・・・」 ルイズの絶望感に満ちた声が漏れる。もちろん、それはキュルケにも聞こえていたわけで。 「あははは、ルイズ、なんだかとんでもないのを召喚したみたいね?」 「ふ、ふん!これでも実力は本物・・・なんだからねっ!多分!」 「多分って何よ、私は本気さえ出せれば分けはあっても負けたことは無いわ」 「ふふ、でもあたしはちゃんとした使い魔を召喚したのよ?おいで、フレイム」 すると、教室で他の使い魔と話して(?)いたオレンジ色のトカゲの様な大きな生き物が歩いてきた。 「あら、火の象徴の生き物?」 微妙に不快そうな顔をする幽香。 「そうよ。この尻尾、素晴らしいと思わない?」 確かに、とルイズは思う。この尻尾から見るに、サラマンダーの中でもそれなりに 高位にあるのだろう。と、容易に想像が付く。 「ふーん・・・知能の割に力はあるのね。花、燃やさないでね」 「ふふ、あたしが指示したりしなきゃ、そうそう火なんて吹かないわよ」 「ふーん、ならいいわ」 完全にルイズは蚊帳の外である。 「ちよっと幽香、せめて他人の前では使い魔らしく振舞って頂戴よ」 「嫌よ、逆にルイズしか居ないんなら・・・考えなくも無いけど、他人の前で使い魔 ・・・と言うより、ルイズより下だなんて思われたくないわ」 「ふふ、ルイズ、貴方、使い魔に忠誠も見せて貰えないようだからモテないのよ・・・」 「私はアンタみたいに他人に媚を振り分けるほど暇じゃないのよ」 ルイズが反論をするが、キュルケは幽香に興味があるようだ。 「ねぇ、貴方はなんて名前なの?」 「あら、こちらの貴族は相手に先に名乗らせるの?」 「そうね、こちらから名乗りましょうか。あたしはキュルケ。微熱のキュルケ。」 キュルケはそこで一旦区切ると、ルイズにあてつけるように胸を張り、幽香に向かって艶かしい視線を送る。 「ささやかに燃える情熱は微熱。でも、世の男性はそれでいちころなのですわ。あなたと違ってね?」 キュルケは視線を幽香の胸に移動させ、その後視線をルイズの胸に固定し、嘲るような笑みを浮かべる。 「じゃ、失礼?」 そのまま、キュルケはさっそうと歩いていく。歩く姿でさえ何か色気のような物があった。 「キィィィッ!くやしいっ!何よ何よ!絶対幽香のほうが使い魔としての格は高いんだからっ!」 「・・・・・・」 「どうしたのよ、幽香?」 「胸で・・・負けたわ。そうそう負けることは無かったのに・・・」 「・・・そう」 幽香は割りと本気で悔しがっているようだ。 そこに何故かキュルケが戻ってくる。 「ルイズ、貴方、タバサの部屋に入った何か、見なかった?」 「・・・? いえ、見てないけど?」 「うーん。やっぱりルイズも見てないか・・・」 「どうしたのよ?」 「ううん、ただ、タバサが後で戻ってはいるとはいえ、本が減ったりしてるって嘆いてたのよ」 「ふぅん・・・普通、生徒ならタバサの部屋じゃなくて図書室に行くと思うけど・・・」 「だから妙なのよ。まぁいいわ。見つけたらあたしに言ってね。それじゃ」 こんどこそキュルケは男性の群れに戻っていく。 「変なの・・・」 「へぇ、この学園、図書室なんてあったんだ」 「えぇ、まぁ、一般生徒じゃ入れないところもあるけどね」 「ふぅん・・・まぁいいわ、前に居るの、先生でしょ?」 「げ、危なかったわ。ありがと幽香」 「どういたしまして」 前に来た先生、シュヴルーズ先生が口を開く。 「おはよう皆様、私はこの季節に召喚された使い魔を見るのが好きなのですよ・・・ 本当に皆さん、色々な・・・色々な・・・」 シュヴルーズはルイズの隣に居る幽香を見て凍りつく。 「・・・えー、本当に色々な使い魔が居るのですね・・・」 「ちょっと、ミセス・シュヴルーズ!人の使い魔みて硬直するのは止めてください!」 「そうよ、使い魔を一通り見てみたけど、私以上の生き物・・・いや、かろうじて対抗できそうなのは、 そこの青もやしの竜しか居ないわよ?」 幽香は青もやし・・・いや、タバサを指差して言う。 タバサは反応しない。それに対してキュルケが反応する。 「ちょっとそこの使い魔、タバサをもやし呼ばわりとは、 礼儀がなってないんじゃない?」 「あら、すいませんね。昔、そこのタバサ、だっけ? に似た人が紫もやしと呼ばれて居たので、つい呼んでしまいましたわ。 非礼をお詫びします」 「くっ・・・わ、わかればいいのよ!」 周りからは明らかに喧嘩を売りに行ったキュルケを上手く受け流すほどの知慧を 見せた幽香に控えめながらも感嘆の声が漏れる。 ルイズは幽香の耳元でささやく。 (よくやったわ幽香!) 「ゃん!」 「え?」 しかし幽香はそれに気づかなかったようで、ルイズの息が幽香の耳に入り、 思わず嬌声を上げてしまう。 その声はやけに色っぽく、何人かの男子生徒が反応してしまう。 その耳を押さえて甘い声を上げながら顔を赤らめるという動作を 幽香のスタイルとルックスを見ていたギーシュは直視してしまった。 「・・・可憐だ。薔薇たる私が、あの花を手に取らない?そんなことはあり得ない。そんなことは―――!」 ギーシュは、ルイズの最初の召喚、そう、コルベール場外ホームラン事件を見ているのだ。 もちろん幽香の名乗り上げも聞いている。 「そうだ、花だ!全ての美しい花は私の物、ならば私が薔薇である必要は何処にもなくて―――!」 気障なギーシュがなにやら叫んでいるが関係ないことである。 しかし、ミセス・シュヴルーズ先生は耐えられなかったらしい。 「ふがっ!」 「しばらく黙っていなさい。では授業を始めましょう」 「ふがふぐふもっふー!」 ギーシュの喚く声が五月蝿いので生徒達によって窓から落とされる。 これは痛い。 「では、今日は使い魔を召喚して皆さん疲れているでしょうし、土魔法の基本、錬金 のおさらいをしましょう。それでは・・・」 シュヴルーズ先生が錬金の理論を説明している。 しかし、ルイズにとっては実技が出来ない分、座学はかなり優秀な方である。 そんなルイズにとっては、非常に退屈な授業である。 しかし、幽香はしきりに頷きながら、その授業の内容を咀嚼している様であった。 「幽香、意味わかるの?」 「うーん、分からないわけじゃないんだけど、どうにもピンと来ないわ。 せめて、一回でも実技が見れれば・・・」 「・・・貴方、実は頭良い?」 「・・・伊達に数百年生きてないわ」 「うそっ!貴方、そんなに生きてたの!?」 「言ってなかったかしら?妖怪は軽く千年は生きたりするわよ。 ま、種族にもよるけどね」 「・・・何か、常識が崩れて来たわ」 この時、ルイズは不覚にも大きな声を上げていてしまった。 「ミス・ヴァリエール!」 「はっ!はい!」 「随分と余裕のようですね。では、私がやるつもりだった 錬金の魔法を実演していただきましょう。大丈夫です。 貴方はとても優秀な生徒と聞いています。さぁ」 途端に周りがザワザワと騒ぎ始める。 「あの・・・先生、やめさせた方がいいと思います」 「もう爆発は見たくありません!」 「触ると爆発する技ってあったわね」 周りの生徒達が口々に止めろ止めろと騒ぎ立てる。 その様子を見て、なおルイズはその指名を受けた。 「やります!」 ルイズのこの宣言で、生徒達が隠れようとした。 「―――静かにしてくださらない?」 しかし、ルイズの隣に居た女性、いや、使い魔の幽香が、 この喧騒の中でもやけに響く、重く、低く、人間の本能に直接語りかけるような 声を、いや、もはやこれは号令だ、を掛ける。 「ミセス・シュヴルーズ?」 「は、はい?」 幽香が、非常に優しい声でシュヴルーズに声を掛ける。 周りの喧騒は、幽香の先ほどの一声で静まり返っていた。 「普通は生徒の前に、先生が手本を見せる物じゃなくて? ―――ミセス・シュヴルーズ?」 幽香の、「異論は許さない」と言う、確固とした感情の籠められた言葉は、 それは言霊となってシュヴルーズの考えを侵食する。 「え、えぇ、そうですね。わかりました。では私が手本を見せます」 そう言ってシュヴルーズは、土を出すと、それに魔法を掛ける。 するとその土は、金の輝きを放つ金属に変化する。 「あら、凄いですね先生。それは金ですか?」 幽香は心底感心した風でシュヴルーズを見て、声を掛ける。 それに対してシュヴルーズは自嘲したような 笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。 「いえ、これは真鍮です。私は二つしか属性を掛け合わせられませんから。」 シュヴルーズの自分を見下すような言葉に、幽香はポツリとつぶやく。 「ふぅん―――なんだ、これなら、まだ魔界の人形の魔法の方が高度だわ」 「え?」 幽香のぽつりと言った一言は、近くに居たルイズにしか聞こえていなかった。 「ミセス・シュヴルーズ?」 「は、はい、何でしょうか・・・?」 「よろしければ、私に一度やらせて戴けません事?」 「え?」 シュヴルーズは、不思議そうな表情をしながら、疑いの念の篭った声を上げる。 その幽香の申し立てに、ルイズが反応する。 「や、やめてよ幽香!私が恥かいちゃうじゃない!」 「見てなさいルイズ―――これが、私の実力って言う物よ」 幽香は、あたかも自分がこの空間の支配者のごとく、 いや、事実そんな状況だ。誰もが、学園長室に居る三人ですら、 遠見の鏡を使ってこの状況を覗き見ている。 「行くわよ―――」 幽香の宣言に、全員が息を呑む。 そして―――幽香の魔法、土を真鍮に変える魔法が使われた。 それは、貴族の使う杖と言う、それなりの長い時間を掛けて作られる杖と言う 魔法媒体無しで振るわれた。 「―――出来たわ」 そして、その土は見事金の輝きを放つ別の金属、真鍮に成り代わっていた。 「――――――!!」 その歓声は、どこまでも無音であった。 ただ、ルイズを初めとする、学園全員を、震わせ、叫ばせる物であった。 そして、幽香は言う。 「ルイズ?」 幽香の突然の呼びかけに、ルイズは驚く。 「な、何よ?」 「ルイズ、こっちにいらっしゃい。もしかしたら、 貴方に魔法を使わせられるかも。」 「なっ!」 「「「なっ!?」」」 教室のほぼ全員が驚きの言葉を上げる。 もちろん、校長室の三人も、である。 「どうするの?ルイズ?私のやり方―――やってみない?」 「当然、やるわ!」 ルイズは、もしかしたら今までの自分の評価をひっくり返せるかもしれない その考えだけで、走ってやってきた。 それはそうだろう。幽香は、完全に魔法の素人の筈なのだ。 その幽香が一発で魔法を成功させた。つまり、それは自分にも 魔法が使えるのではないか―――? そう、考えさせるのに十分であった。 「偉いわねルイズ・・・よく来てくれたわ」 ただ、ルイズには、一つ心配なことがあった。 何故か、幽香に良く解らない迫力と言うか、 周りの人に、一切の反論を許さない、ナニかが渦巻いていたのだ。 「待ってね・・・」 幽香は、またシュヴルーズの用意した土に何処からか 出した種を蒔き、宣言する。 「フラワーマスターの名において宣言するわ。 ―――咲きなさい」 すると、ルイズ、この中で最も博識なタバサですら見たことの無い花を咲かせる。 その花を、ルイズの花に近づけると、ルイズは意識を失った。 「ふふ、いいわ。さぁ―――!」 その光景を見ていたオールド・オスマンと、コルベールは、ほぼ同時に叫んだ。 「いかんっ!」 すぐさまその幽香の行動を止めに行くが、幽香の鏡越しの視線と、 満面の笑みを見ると、一瞬でそんな考えが吹き飛ぶ。 元々、動くことすら出来なくなっていたロングビルは、「ひっ」 と言う声を上げて、失神した。 使い魔は、そのメイジと実力差があると、メイジから主従の関係を取り除こうとする。 幽香は、正にそれをしようとしていたのだ。 幽香は、嬉しそうに叫ぶ。 「さぁ、これで私の使い魔生活も終わり―――よっ!」 光が走った。
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前ページ次ページヘルミーナとルイズ あのときから数えて、三度目の冬が訪れていた。 ルイズとヘルミーナはろくに人の手も入っていない、岩がごろごろと転がっている山道を登っていた。 日はまだ高い。この調子なら目的を果たすのに多少手間取ったとしても、今晩はテントの中で落ち着いて休むことができるだろう。 今更堅い床では眠れないなどというやわな神経は、両者とも持ち合わせていなかった。 「それでルイズ、道は大丈夫なんでしょうね。こんな物騒なところは用事が済んだらさっさとおいとましたいところなんだけど」 そう言ったのはヘルミーナ。 彼女は今年で二十三になるそうだが、現れたときの姿とあまり変わっていない。相変わらずの美しさと妖しさで周囲を惹きつけてやまない。 「そう願いたいわね。私だってこんなところまで来たのは初めてだもの、確証なんて持てやしないわ」 そう答えたのは手に地図を持って、ヘルミーナに先行していた桃色の髪の女性。 ――ルイズだった。 あれからだいぶ背も伸びた。ヘルミーナと出会った頃は彼女の方が十サントほど高かったのだが、今ではほぼ同じ身長になっている。 やせっぽちだった体型も、女性的な丸みを帯びたものへと変わっていた。 胸だけは水準以下であるが、ほっそりとした体つきとのバランスが美しく、それは十分に男を惑わせ得るものとなっていた。 だが、何よりの変化は、その目であろう。 もとよりつり目がちだった目は一段とその鋭さを増し、かなりキツイ雰囲気を放っている。 見たものを震え上がらせるような冷酷な目は、以前のルイズにはないものだった。 二人とも旅装を纏っているが、それが野暮ったい印象は与えない。 一般的に動き回るに向いていないメイジや僧侶用のローブを大胆に改造した着こなしは、それだけでセンスの良を感じさせる。 色はヘルミーナは紫を基調として、ルイズは黒。それぞれ二人のイメージと相まって、彼女たちの魅力を最大限に引き出していた。 「巣立ちを迎えていない火竜の幼体、本当に見つかるのかしら」 「こんな眉唾な情報を見つけてきたのはあなたじゃない。でも、もしも本当なら幼体の『竜の舌』、とても貴重だわ」 この二人、一般的なメイジとは違う、少々特殊な存在であった。 曰く、この世界でたった二人の『錬金術師』。 錬金術の練金は土魔法『練金』を意味するものではない。 素材を調合し、全く違う効果を持つ様々な薬やアイテムを作り出す研究者の総称、それが錬金術師である。 それがヘルミーナが召喚された翌日に、ルイズに語って聞かせたことだった。 そして今、彼女たちは旅の空の下にいる。 二人が出会った翌日、ヘルミーナは自分が錬金術師であること、材料の収集中に魔物に襲われ、その先にあったゲートに飛び込んで難を逃れたこと、そして自分は親代わりであった先生を捜して旅をしていたことをルイズに話した。 一方、ルイズはここがハルケギニアという世界であること、ヘルミーナは異世界から来たかもしれないということ、この世界に錬金術というものがないことを伝えた。 この頃になるとルイズも本来の冷静さを取り戻し、お互いに必要な情報の交換が行うことができた。 特に、お互いの関心事については念入りに話し合った。 ルイズにとっては、錬金術のその技。人工生命や死者蘇生、聞いたこともないような途方もない錬金術の奥義の数々。 ヘルミーナにとっては、異世界の存在とそれに付随する様々な未知なる事柄、そしてルイズが喪ったという少年の話。 そうしてお互いの関心事が分かったとき、ルイズはヘルミーナに申し入れたのだ。 『自分に錬金術を教えて欲しい』と。 ルイズのこの申し出をヘルミーナはしばし検討し、結果として承諾した。 そこにどの様な思惑があったのか、神ならざるルイズには分からなかったが、確かなことは自分が一筋の光明をつかんだという事実であった。 ヘルミーナは自分が元の世界へ戻るまでの間、ルイズに錬金術を教える、その代わりに自分が戻るための手助けをして欲しいと言った。 ルイズは一も二もなくこれを快諾し、この世界で最初の『錬金術師の弟子』となった。 そしてその日の夜、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールは学院から失踪した。 あれから三年、ルイズは一度もトリステイン魔法学院を訪れていない。当然ヴァリエール公爵家にも。 今、ここにいるのはただのルイズ。 貴族の名誉も、家族も、友人も、何もかもを捨て去った、ただのルイズであった。 「毎度思うんだけど、空飛ぶ箒ってこういったところでも使えれば便利じゃないかしら」 「仕方がないわ、あれはそういうものだもの。大ざっぱな移動はできてもこういうところを飛ぶのは向いていないわ」 ルイズの軽口にヘルミーナが相づちをうつ。 深い意味はない、毎度の愚痴と切り返しの応酬だ。 ルイズとヘルミーナは弟子と師匠、召喚者と被召喚者という関係にありながらお互い対等の立場をとっていた。 お互いが教師であり生徒、そんな二人は主人と使い魔の証である使い魔の契約、すなわちコントラクト・サーヴァントも済ませていなかった。 ルイズにとって使い魔とは生涯あの少年ただ一人であったし、ヘルミーナ自身も使い魔という立場を望まなかったからだ。 空飛ぶ箒の調合材料である風石の品質、その調合に使われる中和剤の元となるラグドリアン湖の水についてお互いに意見する。 いつも通りの大して実りもない雑談をしばし続けたあと、二人は目的地周辺に到着した。 「情報によればこの辺のはずね。ルイズ、準備は良い?」 「氷属性のブリッツスタッフでしょ。分かってるわ」 ルイズが背負った革袋から強烈な冷気を放つ杖を取り出すと、ヘルミーナも同様にそれを取り出して手に持った。 「標的はあくまで幼体だけ。もしも成体に見つかったら一目散に逃げる。良いわね」 「幼体を見つけたら二人でブリッツスタッフを使ってブレスを使われる前に倒す。手順は覚えてる、大丈夫よ」 彼女たち二人の目的は竜の舌、それも幼竜のそれだ。 竜の舌は錬金術の素材としても大変貴重なものであるが、その中でも幼竜のものとなるとその価値は跳ね上がる。 幼い竜は常にその周囲を成竜たちに囲まれて生活している。 単独で行動する成竜を相手にするよりも、幼竜を相手にする方がよほど骨が折れるのだ。 なぜそのような明らかに危険過ぎる幼竜を、女二人で探しているのか? それは今ルイズが手にしている一枚の紙切れに原因があった。 多数の火竜が生息する火竜山脈、彼女たちはそこへ鉱石の採集が目的でやってきた。 準備を整えるために立ち寄った麓の町に一泊したときのこと、彼女たちは酒場で気になる言葉を耳にした。 それは「火竜山脈の一角で、親とはぐれた幼竜を見かけた」というものであった。 普段ならそんな与太話、酔っぱらいの戯言と聞き流すところだったが、それが火竜山脈近郊で幼竜となると話は別だ。 ヘルミーナとルイズはそれを喋っていた傭兵風の男に近づいて、酒を奢り、しなだれかかり、女の武器を使って詳しい話を聞き出した。 商隊の護衛だという男は、昨日まで火竜山脈の一部を通る護衛の仕事についていたらしい。 多数の火竜が生息する火竜山脈は、ハルケギニアでもトップクラスに危険な一帯であることは間違いないが、山脈のどこへ行っても竜と遭遇するというわけでもない。 竜たちの生活圏の外ならば、その危険度は大幅にダウンする。 無論、群からはぐれた竜が出現する可能性も完全には否定できない、 そういうわけで、彼は竜のテリトリーの外を横断する商隊の護衛任務を引き受けていたらしい。 危険は大きいがその分報酬も大きい、運悪くドラゴンに遭遇しなければしばらく遊んで暮らせる。 そんなことを心の支えにしながら、怯えつつもきちんと護衛の仕事を果たしていた彼は、もうすぐ山脈が終わろうかというところでそれと遭遇したらしい。 まだ翼で飛ぶこともできないよう、幼い竜の子供。 幼竜の周囲に親竜たちがいる。 子育てに神経質になっている成竜たちは非常に好戦的である。 危険きわまりない幼竜と遭遇してしまった彼は、正直なところ死を覚悟した。 けれど、不思議なことに幼竜の周辺には他の竜の姿はなく、商隊が竜を刺激しないように息を殺して歩を進める間も、結局何も現れなかった。 そうして、商隊と男は無事に街へと到着したというのが話の顛末であった。 しきりにルイズのお尻を触ろうとする男をあしらいながら聞き出したのは、なかなかに貴重な情報であった。 最後に男に地図を見せて場所を確認してから、彼女たちは酒場をあとにした。 そして今ルイズが手にしている紙切れこそ、男が幼竜と遭遇したという場所が記された地図であった。 「まだこの辺に居てくれると嬉しいわね」 「ハルケギニアの竜の生態は分からないけれど、目撃されてからまだ三日。この周辺に居ると考えるのが妥当でしょうね」 その『周辺』とやらがどの程度の範囲なのか分からないから困るのだとルイズは嘆息した。 冬とはいえ、火竜山脈は暑い。 山頂付近の蒸し風呂じみた暑さではないにしろ、二人が今いる場所も十分に暖かかった。 加えて、街から山の入り口までは空飛ぶ箒で飛んできたものの、そこからは徒歩。 火竜の幼体がその場所を離れてしまう可能性を考えて、二人は割と強行軍でここまで上ってきている。 ヘルミーナもルイズも、弱音は吐かないものの、美しい顔を流れる汗は正直であった。 「……少し探して駄目なら、一度休憩にしない?」 「……賛成ね。ドラゴンも、もっとじめじめして空気が淀んでる地下に住めばいいのに」 そろそろ付き合いも長くなってきたこの師匠の変な趣味には口出しせず、ルイズはあたりを見渡して休憩ができそうな場所を探した。 ルイズの視界の端を、ちらりと動く何かの影が横切った。 「! ヘルミーナ! あそこ!」 胸元を手で扇いでいるヘルミーナを余所にルイズが指さしたその先、小高く積み上げられた岩の上、そこには赤い獣の姿があった。 大きさは牛ほどもあるだろうか。赤い鱗に覆われ、背中には折りたたまれた翼がある。 間違いない。ハルケギニア原産の火竜種の幼体であった。 ルイズが気づくと同時、幼竜もルイズたちを確認したのか、威嚇の唸りをあげた。 発見したのはルイズ、だが先に反応したのはヘルミーナ。 「ブリッツスタッフ!」 ヘルミーナが手にした杖の先端を幼竜へと向けると、そこから一直線に強烈な冷気が迸った。 同時、幼竜の喉の奥がオレンジに輝き、恐怖と共に語られる火竜の象徴、ファイアブレスが放たれた。 幼くともドラゴンはドラゴン、そのブレスはヘルミーナのブリッツスタッフの冷気を相殺せしめる程の威力があった。 しかも、その余波は二人の肌を軽い熱波をもって炙っていった。 相殺どころか、押し負けている。 熱気と冷気がぶつかり合い、その余波で発生した水蒸気、それによってルイズたちの周囲はまるで霧にでも包まれたかのようになっていた。 「ヘルミーナ! 杖!」 そう言ってルイズは手持ちのブリッツスタッフをヘルミーナに放り投げた。 ブリッツスタッフはその性質上、使えば使うほどに充填された魔力を消費していくマジックアイテムである。 つまり、追撃には初撃以上の攻撃力は望めない。 その最初の一撃がブレスを押し返せないと分かった以上、彼女たちが考えていたブリッツスタッフを使って、遠くから力任せに押し切るという作戦は使えなくなったのである。 真っ白の視界の中、ドラゴンがいた方向へと一直線に駆けるルイズ。 懐から小さな杖とピルケースを取り出し、器用に片手でケースの中身を口に運ぶ。 口に含んだ錠剤を奥歯で噛み砕き嚥下して、次に呪文を唱え始める。 薬の助けを借り、意識と肉体とを切り離す。意識は呪文に集中し、体はただ最初に決めた通りに前へ向かって走るだけ。 そうして彼女は走りながら、見事呪文を完成させた。 霧が薄れ、再び視界が戻ったとき、幼い竜の目にはナイフを片手に持った女が自分へ向かって走ってきているのが映っていた。 このとき、幼い竜は飢えていた。数日前に親竜とはぐれて以来、常に空腹だった。 しばらく前に餌になりそうなものを見かけたが、それは数が多く体が大きく、諦めざる得なかった。 今回見つけた餌はそのときのものと同じ形をしていたが、先のやつよりも小さく、何より柔らかくて美味そうだった。 目の前の餌を食べる。捕食者の頭は、その原始的な欲求を満たすことでいっぱいになっていた。 幼竜の顎が開く。今ぞ高熱のブレスが吐き出されるという段となっても、駆けるルイズに怯みは感じられない。 だが、ドラゴンにしても躊躇いはない。 真っ直ぐに岩場を上ってくるルイズに向かって、灼熱のファイアブレスが浴びせかけられた。 これで終わり、一巻の終わり。 人の身でドラゴンのブレスの直撃を受けて、無事で済む道理などありはしない。 だが、次の瞬間獲物を確認しようとのそりと動いた幼竜を襲ったのは、腕に走る焼け付きような鋭い痛みだった。 「ギッ!」 突然襲った未知の感覚。それは不快で、ひどく幼竜を苛立たせるものだった。 「ギャギャッ!」 体中を使って痛みと怒りを露わにする。 そうしてじたばたと手足を振り回す幼竜から、素早く飛び退いた影一つ。 五体満足で、火傷一つ負っていないルイズの姿。 その手には赤い血を滴らせた、一振りのナイフ。 しくじった。 折角のイリュージョンの魔法が成功したというのに、肝心のナイフは幼竜の腕に傷を負わせることしかできなかった。 正面に投影した幻を囮に使い、自身は側面から奇襲を仕掛ける。そして首尾良く接近したならば必殺の一撃でもって絶命させる。 これがルイズの計画であったのだが、詰めが甘かったとしか言いようがない。 幼竜は未だ健在であるし、そのどう猛さは手負いになったことで、ますます手がつられなくなってしまった。 本来ならこれは一時退却して体勢を立て直すのが定石。だが、それを決行するにはルイズはブレスの射程範囲内部に、深く入り込み過ぎてしまっていた。 引けば丸焼き良くて生焼け、ならば攻めるか? これもまた上手い方法とは考えにくい。 今のルイズの位置は引くには近過ぎるが、攻めるには遠過ぎる。 ならばどちらがマシか? 頭がその回答を導き出す前に、ルイズの体は前へと飛び出した。 弾丸のような俊敏さをもって飛び出したルイズを見て、竜は大きく口を開けた。 喉の奥では既に赤い焔が灯されている、あとはその塊を怒りに任せて吐き出すだけ。 あるいは、幼竜が冷静であったならば、また違った行動に出ていたかもしれない。 自分に躊躇いなく近寄ってくることや、これだけ火を吐いても未だ食事にありつけないでいることで、危険を察知して逃げ出していたかもしれない。 だからそれはある意味では不幸中の幸い、ルイズの功績だったかもしれない。 とにかく、竜は怒っていた。 怒っていたのである。 幼竜の口から、炎の吐息が放たれた。 正面から飛び込んでいったルイズの目の前が、美しいオレンジの光で埋め尽くされる。 それはとても綺麗で、あの夜に、石塀の上から見下ろした闇によく似ていた。 ルイズの耳元で、誰かが囁いた。 ただのルイズになって以来、何度も耳にした甘い誘惑。 (これでサイトのところに行けるのよ) サイト、その名前を思い浮かべただけでルイズの心がキリキリと痛みを感じた。 自分を残してどこかへ行ってしまったあの少年、誰かが書いた悪魔のシナリオの向こう側に消えてしまった大好きだった彼。 そのサイトに逢える、また逢える。 それを思うだけでルイズの体は力を失ってへたり込みそうになってしまう。 「ブリッツスタッフ!」 彼女を幻想から連れ戻したのは相棒の鋭い叫び声だった。 目前に迫った赤い瀑布に、白色の寒波が叩きつけられる。 瞬く間に周囲はもうもうと水蒸気が立ちこめ、視界を奪った。 いつの間にか幼竜とルイズの延長上へとその位置を移動させていたヘルミーナが、ブリッツスタッフに込められた冷気の魔力を解放し、ルイズの背中越しにそれを放ったのだった。 甘美なる誘惑に屈しかけた精神が、強引に現実へと引き戻される。 意識が飛びかけていたそのときも、ルイズの両足はきちんと目標地点へ向けて動いてくれていた。 ルイズが気がついたとき、そこは既に竜の眼前。手を伸ばせば触れられる距離だった。 驚いた幼竜が再びその口を開けてブレスを吐きかけようとする。 だが、四度目のブレスが放たれるより早く、ルイズの手中にある白銀がきらめき、鱗ごとその喉元を真横に切り裂いていた。 ファイアドラゴンの幼子が横たわっている。 その喉元からは赤い血が噴水のように勢いよく噴き出して、周囲を赤く染めていた。 「お見事な手並みだわ」 返り血を浴びるルイズの背後から手を叩く音がする。 ルイズが振り返るとヘルミーナが小さく拍手しながら岩山を上ってきているところだった。 「うつろふ腕輪はあなたに渡しておいて正解だったわね」 非力なルイズが、幼いとはいえ竜の鱗の防御を貫けた要因、ルイズの右手にはめられた腕輪を見ながらヘルミーナが言った。 うつろふ腕輪、人間の力を引き出すことができる腕輪。 しかもルイズが手につているそれはヘルミーナの特別製。武器を使った直接攻撃でなら、ドラゴンの鱗も切り裂けるかもしれないと、以前彼女が笑って話していたものだったのだが、本当に切り裂けたのは驚きであった。 「さて、仕上げね」 幼竜相手とはいえ、竜殺しを成し遂げたという感慨もなく、無表情のままのルイズが倒れた獲物に向き直った。 喉と口から血を溢れさせる幼竜、その口からはヒューヒューと風が抜けるような音が漏れている。 そのどう猛さとはアンバランスなつぶらな瞳が涙に濡れて、鮮血にまみれたルイズを見上げていた。 ルイズはそんな竜の姿を見ても眉一つ動かさずにその場に片膝をつく。 ついた左の膝を竜の下顎に、そして右足の裏を上あごへと当てて、足に力を込めてその口をこじ開けた。 そして、血の海になった口内に目的のものを見つけるとルイズはそれを素早くつかみ、根本からナイフを使って刈り取った。 直後激しく痙攣する幼竜から、ルイズは転がるようにして距離を離すと、ゆっくりと立ち上がった。 その左手には。血まみれの竜の舌。 「終わったわ」 「そう、それじゃ時間も早いし戻りましょうか」 二人は特にそれ以上この件に関して話をすることもなく、先ほど上ってきた山道を下山し始めたのだった。 そのあとには、哀れな竜の骸が一つ。 前ページ次ページヘルミーナとルイズ
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魔法少女おりこ☆マギカ 外編 より 美国織莉子を召喚 ゼロのルイズとオラクルレイ 01 ゼロのルイズとオラクルレイ 02 ゼロのルイズとオラクルレイ 03
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(るいず) 「やっぱり、ここから入ってこようとしてたわね!」 LV HP 力 速 体 知 種族 サイズ EXP ドロップアイテム 13 572 12 32 33 51 1x2 ソウルジェム 属性耐性 状態異常耐性 フィールド耐性 特記事項 善、悪に強い 眠り なし 逃亡不可 ※Ver1.05時点のステータス。 使用技 ブルーファイア 単体対象の有射程攻撃。 ??? (???) 「出番よ実験体! 侵入者をかわいがってあげなさい!」 LV HP 力 速 体 知 種族 サイズ EXP ドロップアイテム 12 416 44 35 45 32 2x4 ソウルジェム 属性耐性 状態異常耐性 フィールド耐性 特記事項 善、悪に強い 眠り なし 逃亡不可 ※Ver1.05時点のステータス。 使用技 ライトブレード 単体対象の近接攻撃。多段ヒット技。 レフトブレード 単体対象の遠距離攻撃。 攻略 戦闘開始直後に現れる三体の???が戦闘フィールドの大部分を塞いでしまうため、 ルイズにまともに攻撃するためには先にコイツらを倒す必要がある。 ???の攻撃で危険なのはライトブレード。 多段ヒット技なので多少運が絡むとは言え、全段ヒットすると結構痛い。 そのため距離を離して戦うのが基本だが、レフトブレードの射程がそれなりに広く、思わぬ所から攻撃される事もあるので注意。 分散して攻撃するよりも一体ずつ集中的に攻撃して早めに倒すと良い。 ???を全て倒すとルイズがブルーファイアを連発してくるが、攻撃力はそれほど高くはないので、 ???さえ倒してしまえば後は大して苦労しないだろう。 キャラクター概要 東方旧作の「東方怪綺談」の2面ボスとして登場した魔界人。 魔界から人間界へ向けて旅行しようとしていたが、 魔界と人間界の境界で運悪く靈夢たち主人公勢に出会ってしまった。 ???の元ネタはナンバー128。 ファイナルファンタジーVIに登場するボスモンスターである。 原作には正面を向いたグラフィックしか存在しないため、 側面や背面のグラフィックはドッターの手打ちによるオリジナルらしい。 本作では、霊烏路 空の能力を用いた核兵器製造プラントを止めるため、 地上部隊を囮として地下から侵入してきた魅魔達に襲い掛かった。 尚、明羅はこの時に???を見て「実験体!?まさか!」と驚いており、 明羅が実験体について何か知っている事が仄めかされている。
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前ページ次ページルイズの魔龍伝 3.使い魔ゼロの学園生活 目を覚ましたゼロが目にしたのは朝焼けが窓に差し込んでいる見知らぬ部屋だった。 ベッドで静かに寝息を立てている少女を目にし自分の今の状況を改めて認識する。 「(そうだったな、俺はこの娘に召喚されてここへ…)」 「んにゅ…クック…ベリーパイ…おいしいわぁ…もっと持ってきなさいよ…ガンダム…」 「…全く良い気なもんだな、このお嬢様は」 それに合わせるかのように寝る前に交わした会話が蘇って来た。 “下着の洗濯”、あまり乗り気しない頼みではあったがやらなかったらそれはそれで騒がれるに違いない。 どうせ子供の着るものだし早い内に済ませて朝の鍛錬でもしようと思い立ったゼロは 剣を片手に、もう片手に下着を掴んでルイズの部屋をそっと後にした。 「…洗濯する場所なんて聞いてないぞ」 が、学園内でルイズに教えてもらった場所を転々としながらゼロは早々に迷っていた。 トリスティン魔法学院で働くメイドの朝は早い。 日も昇らぬ内に起床し、掃除洗濯から貴族達の朝食の準備の支度までまるで戦争のように 総勢でバタバタとこなす。そんな朝の争いの少し前、水を汲みに空の桶を持って走る少女が一人。 ここに仕えるメイドの一人、シエスタである。 「お水を汲んで…洗い物をまとめて…」 「すまないがちょっといいか?」 「あ、はい…ぃいっ!?」 今日の仕事の口にしながら水汲み場まで駆けていたシエスタが振り向くと 標準サイズに比べてはやけに小さいゴーレム(の、ような何か)が立っていた。 人の形を模しているのは何となく分かるが2~2.5頭身と相当に縮められていて まるで子供が遊ぶ組み立て式の人形のような、そんなイメージがした。 「衣服の洗い場を探しているのだが……」 「洗い物ですね、もしよければ私にお任せくださいませんか? この後洗濯物をまとめて洗うので、使い魔さんのご主人のお名前さえ言ってくだされば後で 私がお部屋までお届けしますわ。」 知らない洗い場まで行って女性の下着を洗うという未知の領域の仕事を任されたゼロにとって これは渡りに船であった。 「すまないが…その…これを」 「はい!承りましたわ!」 ゼロが恥ずかしそうにしながらシエスタへ手にした下着を渡し、笑顔で受け取るシエスタ。 が、このメイドの話し振りから一つの疑問が浮き上がる。 「(洗濯・掃除・その他雑用というのは普通使い魔が行うものでは…ないよな、うん)」 昨晩一緒に食事をした使い魔達が思い出されるが、どう考えても火を吹くドラゴンだの 浮いてる目玉だの一般庶務に使うには手に余るどころか部屋が壊れそうな面子ばかりだ。 「ルイズ…俺は召使いか何かなのか…」 「あの…ひょっとしてミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」 「あぁ、そうだが?」 「昨日の事なのに“ヴァリエールの小さなゴーレム”ともう噂になって私達も聞き及んでますわ」 「…へ?」 「皆は笑ってますけど、とても奥ゆかしいのですね。私ちょっと驚きました」 「え、ちょっ」 「それでは私は仕事に戻りますので失礼しますねゴーレムさん」 笑顔のシエスタはそう言うと足早にまた走り去っていった。 「俺…ゴーレムじゃないのに…トホホ…」 朝から何かに負けたような気分に打ちひしがれたゼロであった。 「…フゥッ、ハッ!」 噴水の近くで黙々と剣を振るい朝の鍛錬に打ち込むゼロ。 手にしている剣はかつて彼が手にしていた剣ではない、旅の途中で手に入れた普通の剣である。 彼の相棒は全てを終わらせた後戦友に預けた。 傷つき、全ての力を失った相棒をこれ以上手にする事も、使う事もない。 何より亡き父が残した唯一の形見であったからだ。 ゼロがルイズの部屋に戻るとルイズがふくれっ面でベッドに腰掛けていた。 「あぁ、おはようルイズ。ちょっと剣の鍛錬に」 「使い魔なら起こしなさいよぶぁかーーーーーーーーーー!!」 朝の挨拶は怒号から始まった。 「まったくいつもの調子で起きちゃったじゃないのよ!そこのクローゼットの一番下から下着!」 「え?」 「私に一式着せるのも使い魔の仕事!早くしなさいよ!」 とりあえず下着を出してルイズに渡し、ネグリジェを脱ごうとしているルイズに気づいて 慌て後ろを向きつつ制服を取る。 「服!」 そのままルイズの方へ腕だけ伸ばし制服を渡そうとするが 「着せて」 の一言で遮られた。 朝起こさなかった事とルイズの機嫌の悪さがあり仕方なくルイズに制服を着せてゆくゼロ。 「普通、使い魔に服を着させるもんじゃないんじゃないのか?」 「いいもんアンタ喋れて手足が使える使い魔だし」 「……次からは自分でやれ」 着替えが終わった後は手早く自分の鎧を着けて、共に部屋を後にした。 「あらぁ~、おはようゼロのル・イ・ズ」 「…おはようキュルケ」 部屋を出た二人の目の前に一人の女性が立っていた、長身に燃えるような赤い色の長髪、褐色の肌。 ルイズと同じ制服を着ているが上のボタンはしめられずそこから豊満な胸の谷間が見える。 「で、それが話題の“ヴァリエールの小さなゴーレム”ってわけね~ふぅ~ん」 キュルケがゼロをじろじろと見る。 「何ていう名前なの?」 「俺はゼr」 「こいつはガンダムっていうのよ!うん!ガンダム!」 ぜロが名前を言いかけた所でルイズが割り込んで名前をガンダムだという事にしてくる。 異様なまでに「ゼロ」と呼ばれたくないその態度がゼロとしては少々気にかかっていた。 「ガンダムねぇ…変わった名前だしおもちゃみたい」 「なっ!」 「なんですってぇこのおっぱいオバケ!」 驚くゼロと憤慨するルイズをよそに自信満々な態度で 「私の使い魔見てみるぅ?フレイム~」 と呼ぶとのそっ、とキュルケの後ろから赤い大トカゲが出てきた。 それは昨夜ゼロに肉をあげようとしたあのトカゲ。 きゅるきゅると鳴きながら近寄ってきたフレイムの頭をゼロが撫でる。 「お前か、よしよし」 「…何でガンダムがキュルケの使い魔の事を知ってんのよ」 「昨日飯を食べていたらこいつが肉をくれようとした」 「あらぁ~ご主人様と違って使い魔同士仲良くやってるようじゃな~い?」 キュルケがさも勝ち誇ったような顔でルイズに満面の笑みを見せる。 「…食堂に行くわよ!」 「あ、あぁ」 声を荒げながら足早に去るルイズを追ってゼロも後を追いかけて行った。 「うちのフレイムがそこまで懐くなんてあのゴーレム、何なのかしら…」 しかも今飯って…ゴーレムってご飯食べないわよね?」 「きゅる…きゅるきゅる」 「全くヴァリエール家の使い魔がツェルプストー家の使い魔から 情けをかけられるなんて恥よ!罰として朝食は抜き!」 「理不尽すぎるぞ!」 「いい事?我がヴァリエール家と憎きツェルプストー家の因縁はそれは長きに渡るものよ!」 と、食堂まで歩きながらその因縁とやらを話すルイズ。 耳が痛くなる思いをしながら食堂まで歩いたが、入り口前でルイズがご機嫌斜めに 「さっきも言ったけど朝食抜きだからアンタはここまで」 と言い放った。 「…やはり召喚された時に学院から出た方が良かったな」 空腹が身に染みるのを我慢しつつ、食堂入り口に突っ立っているゼロであった。 授業の時間になり、ゼロは教室の後ろの壁にもたれかかって様子を見ていた。 何人かの生徒がこちらを見ているのが少しうっとおしかったが生徒の方を一睨みすると そそくさと席に向き直る。 「(…俺を何だと思ってるんだ)」 ゼロの横にはフレイムが寝ていた他に、教室に入れるぐらいの中型の使い魔が暇そうにしていた。 窓の外を見ると教室に入りきらない大きな竜(ルイズに聞く所によると風竜というらしい)が 佇んでおり、教室の様子を横目で伺っている。 「…確かにこの使い魔の中では俺は目立つ、か」 生徒がこちらを伺うのは“ゼロのルイズが召喚した変な使い魔”というのが もっぱらの理由であったのにはゼロは気づいていなかった。 「皆さん、おはようございます」 教室に入ってきた中年のふくよかな女性、シュヴルーズの声が響く。 「春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 後ろに陣取った使い魔を次々と眺めるシュヴルーズの目がゼロに留まった。 「おや、珍しい使い魔ですねミス・ヴァリエール」 ルイズ以外の生徒から一斉に笑い声が上がる。 「出来損ないのゴーレムじゃ仕方がねーよなー!」 「うるさいわね風邪っぴき!」 「俺は風邪っぴきじゃなくて“風上”だ!ろくに召喚できないゼロの癖に!」 「ミス・シュヴルーズ!このうるさい風邪っぴきに注意して下さい!」 「喧嘩両成敗です」 シュヴルーズが杖を振るうと、ルイズ、そしてルイズと口論していた微笑みデブな男の子、マリコルヌの 口に赤土が一瞬でふさがった。 「罰としてこの状態で授業を受けてもらいます」 赤土を剥がす二人をよそにシュヴルーズの授業が始まった。 授業内容は年度最初の授業、という事でごく初歩的なこの世界における 属性の概要から始まっていた。 「『土』系統の魔法は……この魔法がなければ重要な金属も……皆さんの生活に密接に関係……」 「(生産・加工・建設・農業…魔法が産業の根幹まで関わってるとはな… なるほど、魔法が使える貴族がここまで権力を持つのも無理は無い)」 「(そういえばルイズが魔法を使っているのを見た事が無いな…)」 シュヴルーズの講義を聴きながらゼロはルイズの事を思い返していた。 魔法が使えるのが貴族、あのプライドの高い性格からして誇示の為に多少は使ってもよさそうなのだが 彼女は最初の召喚以外魔法を使っていないのだ。 「(…ま、これぐらいなら聞いても怒られないかな)」 ゼロは近くにいたルイズにこっそりと近寄って疑問をぶつけてみる事にした。 「ルイズ」 「何よ授業中に」 「俺を召喚してから魔法を使ってないよな、何か魔法を使わない理由でもあるのか?」 「アンタには関係ないわよ!」 「ミス・ヴァリエール!使い魔との交流は結構ですがそういった事は後でお願いします」 「すっ、すみませんミス・シュヴルーズ!」 ゼロの質問に思わず語気を荒げたルイズにシュヴルーズの注意が入った。 「では、次に土系統の基礎的な魔法、“錬金”に話を移しましょう」 授業の内容が“錬金”に移る。石を金属に変えるといった魔法でシュヴルーズが実演として 石を真鍮に変えてみせた。 「では…さっきおしゃべりをしていたミス・ヴァリエール、貴女に実際に錬金をしてもらいます」 その言葉を発した途端、教室の空気が一瞬止まった。 「ミス・シュヴルーズ!ルイズに錬金を行わせるのは止めておいた方が良いかと思われます!」 一番最初に口を開いたのはキュルケだった。いつもの軽口ではない、真剣味を帯びた一言。 「そうですミス・シュヴルーズ!ルイズに魔法を扱わせてはなりません!」 「彼女では荷が重過ぎます!」 「ルイズが錬金だなんて絶対無理ですムリムリムリムリかたつむりです!」 等と、次から次へとルイズの錬金に対する警告が周りの生徒から飛び出す。 「ミス・ヴァリエールは大変努力をなされてると聞きました、誰にだって得手不得手がありますから 多少の不出来など気にしなくて結構です。さぁ、やってごらんなさい」 席を立ったルイズが教壇の前に立ち、目の前に置かれた石ころに対して杖を構える。 ここは見守っておきたいゼロだったがその過程までに全ての生徒が椅子の下に隠れたり 席を立って後ろの方の机に退避している様子がかなり気になっていた。 「(…何でここまで大げさな反応なんだ?)」 先ほどの生徒の反応ぶりから今までの馬鹿にしたそぶりは感じられない、確実に“何か”あると 読んだゼロは教室の一番後ろ、入り口近くまで移動してルイズを見据える。 「(杞憂であれば…)」 「ではミス・ヴァリエール、この石を錬金で金属に変えてごらんなさい」 ルイズが呪文を唱えて構えた杖を振り下ろしたその瞬間、まばゆい閃光と轟音と共に石が爆ぜた。 爆発は教室全体に及び入り口からは黒煙がもうもうと立ち上がっていた。 「敵か!?」 ゼロは咄嗟にその場に屈んだのと、ルイズから離れていたためさほど被害は無かった。 爆発の衝撃で暴れる他の使い魔達をよそに、ゼロが立ち上がりながら背中の剣に手をかける。 が、目の前の光景は爆発によって所々崩れた教室と、隠れてジッと動かない生徒達 そして黒板の前に倒れて伸びているシュヴルーズと 教壇の前で傲岸不遜といった感じで腕を組むルイズの姿だけだけであった。 「ちょ~っと、失敗したみたいね」 いつもの調子で言い放つルイズ。 「ふざけるな!どこがちょっとだゼロのルイズ!」 「貴女が魔法を使うといつもこうではありませんの!?」 「今まで成功した試しが無いじゃないか確率ゼロのルイズ!」 「俺の使い魔がアッー!」 隠れていた他の生徒達が猛然とルイズに抗議していた。 「(…“ゼロ”、か)」 ゼロはルイズがゼロと呼ばれている理由と、自分をゼロと呼ばない理由をようやっと理解していた。 「…」 「…」 ボロボロになった教室でゼロとルイズが黙々と片づけをしていた。 シュヴルーズが再起不能になったため授業は中止、魔法を使ったルイズがその責を負い 罰として魔法を使わないでゼロと片づけをしていたのである。もっとも、魔法を使えばこうなので 必然的に自力でどうにかするしかないのは自明の理なのだが。 ゼロは破片や使い物にならない椅子や机を外へ運び出しては新品のものと取替え ルイズは無事だった道具を雑巾で拭いていた。 「主人の問題は使い魔の問題」とゼロも巻き込まれた訳ではあるが ゼロはあまり抗議する気にはなれなかった。無言ではあるが彼女の顔からは悔しさが見て取れたからである。 「ルイズ、この机は何処に置けば…」 「なんで…」 「え?」 「なんで何も言わないのよ…」 ルイズが机を拭きながら唐突に聞いてきた。今まで無言だっただけに少しドキリとするゼロ。 「その…だな…」 「分かったでしょ?私がゼロって呼ぶのも呼ばれるのも嫌な理由」 ボロボロの衣服も相まってかルイズの放つ言葉が痛々しく聞こえる。 「…俺は気にしてはいない、俺をガンダムと呼びたいならそう呼べばいい」 「嘘よ…どうせ心の中では見下してるんでしょ?魔法も使えない、貴族の出来損ないだって」 「ならもっと研鑽を重ねればいい、笑う奴は放っておけ」 「そうやって来たけど…でも…魔法だけは駄目だった…一杯勉強しても、知識を目一杯覚えても… 魔法は応えてくれなかったわ!いつも爆発して、失敗して、ゼロって…」 机を拭く手は止まっておりルイズは体を震わせていた。話している内につい感情的になり 胸の内を、今までの自分を目の前の使い魔に吐露していた。 「ルイズ」 「放っておいてよ!使い魔をやめたいならさっさとここから出てけばいいじゃない! どうせゼロよ!私には何もないのよ!」 こういった癇癪には慣れておらず、どうにもルイズを扱い損ねているゼロであった。 「俺の剣の流派は雷龍剣(サンダーソード)っていう流派なんだ」 「いきなり何よ」 「雷龍剣ってのは一子相伝、つまり継承する人が一人だけだ。」 「…効率悪いのね」 「まぁ、な。そして継承者には技と共に専用の剣も受け継がれる。 それでその継承者を決める戦いってのがあって俺はもう一人の継承者候補と戦ったんだ。 だが俺はそいつに負けてた。なのに最終的に継承者になったのは負けてた俺だったんだよ」 「何でよ」 「相手が言うには“あの剣がお前を選んだ”からなんだそうな、それで相手が辞退した。」 「剣が人を選ぶって…インテリジェンスソードじゃあるまいし」 「さてね」 「で、今の話が何なのよ」 「えーっとだな、うん、今は魔法が使えないからといって決して劣っている訳じゃあない。 実は凄い力秘めているのかもしれないからな、うん」 「で?」 「でだな…その…剣が人を選ぶように使い魔だって人を選ぶと思うんだ。 別に嫌味じゃない、俺がお前に呼ばれたのも何か因果があっての事だろうと俺は考える。 だからだな…あー…せっかく召喚したんだ、俺を信じろ。話ぐらいなら聞いてやるから…」 「もしかして私の事を…慰めるつもりで?」 「あ、あぁ…」 「…ったく、全然慰めになってないじゃないのよ」 たどたどしく話すゼロの姿を見て完全に飽きれきったルイズ。 その姿を見てゼロはとりあえず一安心していた。 「今のはちょっとからかっただけよ、アンタの姿が馬鹿らしくてもう演技する気にもなれないわ」 「ま、そのくらい元気なら涙ぐらいは拭いておくんだな」 「おっ、女はねぇ!嘘泣きが得意なの!だからこれも嘘泣き!」 そう言ってブラウスの袖で顔をぐしぐしと拭いた後、ルイズはいつもの調子に戻っていた。 「あとはやっておくから、ルイズは部屋に戻って着替えたらどうだ? 流石にその格好は俺の目から見てもよろしくない」 「言われなくても着替えるわよ!もう!」 色んなところがボロボロになった服に気づいたルイズは机を拭いた後さっさと教室を出て行った。 「ただのじゃじゃ馬娘かと思えば……やれやれ、複雑だな」 そう呟きながら一人机を運ぶゼロ。とても似つかないものではあったが かつて雷龍剣と共にがむしゃらに父の仇を追っていた自分の姿をルイズに重ねていた。 前ページ次ページルイズの魔龍伝
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前ページ次ページルイズ・キングダム!! 私の名はルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール。 つい数日前まで『ゼロ』のルイズと蔑称されていたわ。 でも今はもう違う。 3日前の授業での事、前回の授業をサボった私に『赤土』のシュヴルーズ先生が復習のためにと『錬金』を行うように言ってきた。 クラスメイトは私が「また」爆発を起こすんじゃないかと顔を青くして見守っていたが、その時既に私はそれまでの私では無かったのだ。 颯爽とエプロンを身に付けて教壇へと歩く。 この『エプロン』は百万迷宮で使われる一般的なアイテムだが、マジックアイテムとしか思えない不思議な能力があった。 すなわち「どんな素材でも肉に変えて食べられるようにする」という効果だ。 木でも牙でも機械でも、果ては魔力や情報のようなカタチの無いようなモノまで肉に変える、百万迷宮脅威のクオリティ! 基本的に迷宮探索中に倒したモンスターを料理するのに使われるという事実は意図的に忘却した。 ともかく杖の代わりに包丁を振り、私は教壇に置かれた石コロをお肉に変える。 「うそっ!? ゼロのルイズが魔法を成功したわよ!?」 「すげぇ! 肉だ……」 「ああ、それも美味そうな肉だ……」 誰もが驚いて、教室がどよめいた。 いやしかしと生徒達は思いなおす。肉を『錬金』で生み出すことは、決して不可能では無いのだから。 彼等に挑戦的な視線を向けて、私はその肉を素早く捌いてサシミにしてショウガ醤油を付けて先生とクラスの皆に振舞ったのである。 「まぁっ! このお味は最高級のアルビオン牛の霜降りですわね!」 「これはっ……生姜醤油が霜降り脂のクドさを消して、見事に旨味だけをしっかりと伝えてくる。絶品だ」 「うーまーいーぞー!!」 「ってゆーか牛刺しとか醤油は無いだろう、ファンタジー的に考えて」 誰もがその絶品の味に舌鼓を打って喜んだ。 私はルイズ。職業は『料理人』。 そして新たに付けられた二つ名は『お肉のルイズ』 ……うん。正直『ゼロ』のまんま方が良かった気がヒシヒシとしてるわよ。 <ルイズ・キングダム!!> 「むにゃむにゃ……早く魔導師になりたーい」 某妖怪人間のような寝言を呟いて、『お肉』のルイズは目を覚ました。 ちなみに一部食通の生徒の間では『最高級霜降り肉のルイズ』と呼ばれて、尊敬の念を向けられている事を本人は知らない。 もし知っても絶対喜ばないだろうけど。 目を覚ましたルイズは自分が腕の中にヌイグルミを抱いているのに気が付く。 茶色くて柔らかくて暖かい子犬みたいな……クロビスが居た。 一瞬ギョッとなるルイズだったが、そう言えば昨夜宮廷メンバーが自分の部屋に泊まりに来ていた事を思い出す。 「宮廷は雨が降ってきて大変なんだ」 そう言ってお休みセットを持って部屋まで押しかけてきたクロビス。 まぁ普通使い魔はよほど大型の物や水生の生き物を除いて主人の部屋に住むのが普通だから、クロビスのように自分で国を作って勝手に暮らす方がおかしい。 なので、ルイズは快く部屋に泊めてやる事にした。 そしたらダッパ君とオババと輿担ぎ四人とモークまで一緒に来たと言うワケだ。 「迷宮ではこんな、天井一面から降り注ぐ雨なんてめったに無いからねぇ。 有るとしても『雨の部屋』のように決まった場所か、雲神が気まぐれにやって来た時か、あるいは上の階で貯水池の底が抜けた時ぐらいのモノじゃしなぁ」 とはオババこと『話の長い』バゼバゼの弁。 空の無い百万迷宮では迷宮の壁に結露した露を集めたり、井戸を掘ったり水路を引いたりするのが普通で、ハルケギニアのような『雨』はあまり無いから宮廷の建物も雨対策がしていないと言う。 最初は珍しさに大騒ぎしていたクロビス達も、雨漏りする中で寝るのは流石に嫌だったので、ルイズの部屋を訪ねてきたのだ。 その結果、クロビスはルイズと一緒にベッドの中。 ダッパ君とモークは部屋の隅で毛布を敷いて。 オババは自分の輿に布団を敷いて眠ることになったのが昨夜。 気が付けば雨が上って良い天気になっていた。 ――あ、おはようございます―― 「おはようダッパ君。良い天気ね」 昨日この部屋で夕食として食べていた鍋物を温めなおしながら、ルイズの起床に気が付いたダッパ君が挨拶してくる。 「二度と同じ味わい無し」と言われるほどテキトーに作られた小鬼汁を部屋の中で調理しているが煙は出ない。 迷宮で貴重な光熱元として使用される『星』のカケラを使って温めているからだ。 世界が迷宮に沈むより前、『天空』と呼ばれる場所で輝いていたと伝えられる『星』は、 迷宮に住む人々の間で無くてはならない物として採集されたり収穫されたり採掘されたりしている。 それが本当にハルケギニアの夜空に浮かぶ星と同じものかは、ルイズにもダッパ君にも判らない事だった。 グツグツと煮え始める小鬼汁を横目に、手早く洗顔の仕度と着替えの世話とピンクブロンドの髪のブラッシングをしてくれるダッパ君は、やはり従者としてとても優秀だ。 「うーんムニャムニャ。もう食べられ……たくないぃ」 ルイズの身支度が終わる頃、クロビスがちょっとグロい寝言を最後にムクリと起きてきた。 小鬼汁の匂いにつられてか、オババ達も起きてくる。 「いただきまーす!」「母神様に感謝じゃ」「…………」――おかわりありますよ―― 何処から出したのか折りたたみ式の短い脚が付いたテーブル「ちゃぶ台」を置いて、小鬼達の朝食が始まった。 それを横目に食堂に向かうルイズ。 以前に使い魔との親交を深めるために食事を共にする事も考えたルイズだったが、その考えはもう改めた。 召喚の翌日にごちそうになった小鬼汁はなんとも表現できない怪奇な味だったから。 それにゴキブリとか食うらしいし。毒々しい太った赤い魚とかも食べていたし。 そんな事もあって、使い魔の食生活にはなるべく手も口も出さない事にしたルイズだった。 ただ、ゴキブリを食べるのだけは禁止しておこうと注意はしたが。 そしたら「学院内のはもうほとんど食べつくしたからなぁ」とか答えられて戦慄したものだ。 「食事の前に嫌なこと思い出しちゃった……」 少し食欲をなくしながら、食堂へと向かうルイズであった。 「親方! お肉のルイズ様がいらっしゃいましたー!」 「おおっ! ようこそ、ラ・ヴァリエール公爵令嬢!! 存分に食って……じゃねぇ、お召し上がりくださいませ」 食堂に入ると、料理長であるマルトー親方の手厚い歓迎を受けるルイズ。 彼女のテーブルの前にだけ、それはそれは豪華な、とても朝食とは思えない食事が用意されていた。 一昨日、『お肉』のメイジとして学院に一躍名を轟かせたルイズはマルトー親父から挑戦を受けた。 尾鰭がついたウワサの中に「食堂の料理よりウマイ」というのが有ったのがそもそもの原因。 そのせいで、たとえ貴族様が相手だろうと、学生に料理の事で引けをとるとは思えない。 料理人のプライドをかけて勝負すると、親方が決闘を申し込んできたのだ。 そうして、二人の熱い料理バトルは繰り広げられた。 具体的に書くと単行本数十冊の大作になるであろう壮絶な戦いは、小鬼が持ち込んだ謎の調味料によって決着する。 白いドロッとした粘液。 ピュアセレクトマヨネーズと呼ばれるらしい、ある百万迷宮のモンスターを倒すと手に入るというその調味料は、甘辛くコク深く、誰もを魅了する天上の美味をルイズの料理にもたらしたのだった。 勝負に敗れ学院を去ると言い出した親方を、ルイズは必死に説得して留めた。 そんな理由で去られては本気で困るからだ。 これからはお前が料理を作れとか言われたら迷惑だし、厨房の人々に恨まれてギーシュの二の舞はゴメンである。 だいたい『料理人』である自分はルイズにとって最高に不本意なので、勝ったからと言って嬉しくなど無い。 だから色々ともっともらしくて立派そうな理由を並べ立てて親方を止めたのだが、そのせいでルイズはマルトー以下厨房の人々から素晴らしい貴族だと尊敬される事となった。 「おうシエスタ! ヴァリエール様のために秘蔵のワインを開けてくれ!」 「はい! よろこんで!」 どこの居酒屋だメイド。 そんな感じで、今朝も早朝からカロリー過多なルイズであった。 「うらやましいよ『お肉』のルイズ。僕なんていまだに『血塗れ』のギーシュなのに……」 教室で、まだ彼女や友達からも微妙に避けられているギーシュが恨み言を言ってきた。 「……私だって『お肉』なんて二つ名は不本意よ」 憮然として言い返すルイズ。 そのまま二人でハァーっと溜め息をつく。 勝つとか負けるとか、名誉とか、本当の強さとかって何だろう。 そんな、ある意味貴族らしい悩みを思う二人の若者でありました。 その日の午後、ルイズは『王国』の視察に出かけた。 もちろん彼女が所属するトリステイン王国ではなくて、小鬼王国こと『新・古代魔神路地裏連合マジカル小鬼同盟横丁』に、だ。 先日新しく作ったという『農場』と『牧場』は王宮の裏手にある。 大臣コルベール先生の研究室の裏手で耕されている田んぼの上に、キラキラと輝く『星』が浮かぶ。 世界が迷宮に覆われた彼等の世界では、このような『星』を使うのが農業の基本。 熱と光を放つ星を管理しているのは、『逸材』と呼ばれる他の小鬼よりちょっとだけ優秀な小鬼だった。 星と対話し、その力を借りる星術に特化した職業『星術師』の小鬼『口から先に生まれた』ピピン。 ピンクのリボンをつけたその小鬼は、小鬼のクセにルイズも使えない魔術を使うのだった。 「泣かないわよ! こんな事で泣くもんですか!」orz<ルイズ そんな感じで劣等感を刺激されながら農場を見回る。 とは言っても、まだ出来たばかりの農場には耕されてタネをまかれたむき出しの土しか無いのだが。 開墾作業で更に農地を広げようと頑張る小鬼や、水撒きの作業を続ける小鬼。 遅めの昼食に小鬼汁の鍋を囲んで和気藹々と過ごす、傍らに鋤を立てかけた小鬼達。 そこには小さいながらも平和な田園風景が広がっていた。 おもいっきり学院の敷地内なのだけど。 向こうではメイドさんが洗濯物とか干してる。そしてレンタル小鬼が手伝ってる。 ちょっとシュールだった。 「いーのかしら、コレ……まぁ誰も文句言ってないから良いか」 考えるのは怒られてからで良いと、最近すっかりC調になったルイズは諦める。 明るい農村を横目に、次は牧場を見に行く。 牛とか馬とかって小鬼より大きいわよねー、どうしてんのかしらーとか考えていたら、そこには予想もしていなかったモノが飼われていたり。 「……ナニコレ?」 ルイズの目の前を悠々と泳ぐキンギョ。 毒々しいぐらい赤くて丸々と太った、ヒラヒラした大きなヒレが印象的なアレである。 アレが、子牛や羊ぐらいのサイズで空中をふよふよと泳いでいる姿を想像してもらいたい。 ギョロリとした巨大な目のどこに向いてるのかワカンナイ視線が正直キモイ。 百万迷宮で一般的な乗騎や農耕魚、また食料などとしても利用されるキンギョは、深階から昇階して来る超越種族『深人』の一種だが、大人しくて知能も低く酪農に向く、家畜化された『渡り魚』の一種だと言う。 渡り魚には他にも肉食のピラニアや口から銃口を生やしたテッポウウオなども居るとの事。 まぁそんなのと比べたら、キンギョなんてカワイイものだろう。 「って言うか、何時の間にこんなにたくさん連れて来たのよ?」 小鬼農場には10匹を超えるキンギョがふよふよと泳いでいる。 農地と比べて意外に数が多い事に疑問を感じたルイズが尋ねると、ダッパ君がヒドイ答えをくれる。 ――『牧場』の『施設』はこくみんになったモンスターをふやすこうかがあるんです―― 「え? 農場ってそーゆー施設なの? 1匹からでも増えるの? 一日で?」 ――はい。そうですがなにか?―― 「なんの魔法よそれは。物理法則がおかしいにも程があるわよ百万迷宮。 それに、この前アンタ達が食べてた赤い魚って……」 ここに泳いでるキンギョは名目上国民。 そして国民とか小魚のうちに焼いて食べちゃったりするのだ。 百万迷宮はホント地獄だぜファハーハー!(AA略) ――ちなみに、クサみがつよいのでミンチにしたりマヨネーズやきにしたりするとタンパクなアジワイでおいしいです―― 「いやーっ! 聞きたくない聞きたくないっ!」 桃色の髪をブンブン振り乱して、両耳をふさいで叫ぶルイズ。 いくらヤサグレていても良心ってモノがあるのだ。ちょっとだけ。 「そんな事よりクロビスは何処に居るのよ? 私に牧場と農地を見に来いって呼びつけたのはあの子なのよ?」 「おう、来たかルイズ! こっちだこっち!」 元気一杯で主人を呼び捨てにする使い魔。 とは言え、ルイズも国王を呼び捨てにする神官だからお互い様と言えるだろう。 むしろ傍目には仲の良い姉妹にも見えるぐらいだった。 そんなルイズの妹みたいなクロビス国王の声に、そちらへと行ってみると、すっかり旅装束を調えた小鬼王。 ぴかぴかに研ぎ上げたナイフと使い古した鎧、マントは普段のものではなくて毛皮の裏打ちされた暖かそうな物。 水筒や食料を腰に結び付けて、側らのキンギョにも荷物を括り付けている。 周囲に居る配下の小鬼達『国王親衛隊』も、粗末な布やおべんとうを身に付けて準備万端の様子だった。 「ナニやってんのよクロビス?」 「ナニって、これから野犬討伐に行くんだぞ。国民が安心して暮らせる環境をつくらんとな!」 勇気凛々で言い切るクロビス。 野犬に数回滅ぼされた国の国王のクセに、ちっともメゲてない。 「大丈夫なの、そんな事してて? まぁアンタは逃げ足だけは早いから平気とは思うけど。 とりあえず怪我には気をつけて、夕飯までには帰って来なさいよ」 「うーん、やつらは夜行性だから徹夜になると思うぞ。さあ、ルイズも早く仕度をするのだ!」 「――――――えっ?」 与えられたのは武器と鎧。 跨らされたのは専用の桃色キンギョ。 何がなんだか理解もしないうちに、野犬討伐に付き合わされるルイズであったとさ。 おまけの用語解説コーナー『百万迷宮の歩き方』 【エプロン】 コモン生活アイテム。つまり百万迷宮的には別にマジックアイテムでもなんでもない。 料理人は最初から持っている。でも3メガゴールドもする超高級品。 倒したモンスターから得た『素材』を全て『肉』に変えるという効果を持ち、 本文中にあるように機械だろうが情報だろうが肉に変えて食べられるように出来る。 更に職業『料理人』のキャラクターが使用して料理を作ると、食べた者の中からランダムで一人、 しばらくの間だけ元になったモンスターの能力を一つ習得できる効果が追加される。 結果、国王が火を吹いたり従者が飛行したり大臣が毒の胞子を撒いたりするように…… 繰り返すがマジックアイテムでもなんでもない、ただのエプロンである。 【農地と牧場】 両方とも生産施設。 生活レベルが上昇する農地はともかく、国民になったモンスターを複製できる牧場は凶悪。 条件次第では白衣の天使とか淫魔とか養殖できます。エローイ。 どうやって増やしているのかはワリと謎。ツガイじゃなくても増やせるからなぁ…… ちなみに初版ルールブックでは『農地』の効果が生活レベルの上昇ではなくて、 軍事レベルを上昇させると誤字られていたと言うオマケな話がある。 一面に広がる農地によって最強の軍事国家を作り出す。 それはそれでシュールで良いかもしれない。 【『口から先に生まれた』ピピン】 星術師にして小鬼の『逸材』。小柄なメスの小鬼で瞳にキラキラ星が浮いている。 趣味は白馬の王子様が来てくれる日を夢見る事。好きな物は平穏な生活。 雨や寒さから身を守ったり、人の心根を外見に映し出すおまじないを使える。 とか決めたところで、ひょっこり死ぬのが小鬼だが。 逸材とは、国に様々な効果をもたらす職業を持った優秀な国民の事で、 ランドメーカー程では無いが並みの民よりは優れていると言う存在の事。 ちなみに星術師の効果は『農地が有ると国家予算が1MG増える』というもの。 【キンギョ】 りっぱな深人系1レベルモンスター。『飛行』と『かばう』というスキルを持つ。 深人は下級のものこそ単なる飛ぶ魚だが、 上級のものになると「ふんぐるいむ」とか「いあいあ」とか言い出す巨大な海産物になる。 そりゃもう一部の人が大好きな海の邪神様とか居ますよもう大好き。 でもコイツは単なる魚。百万迷宮では主要な動物性タンパク質。 迷宮化に適応できずほぼ絶滅した牛や馬に替わる貴重な家畜として運搬乗騎食料と大活躍。 なお同じく下級天使であるハトなどの鶏肉も百万迷宮の民達のごちそうである。 バチ当たりなハナシだと思いますよ実際。 【野犬の討伐】 わざわざこんな事するクロビスは良い王様だなぁ――― とか思うかもしれないが、百万迷宮における小王国の宮廷の任務は大抵こんなモン。 民から要求される諸問題の解決こそが宮廷の存在意義と言っても良い。 でも野犬倒して凱旋帰国したら喝采で迎えられてパーティーとかあるから良いやん。 パーティーのメインになる「ごちそう」は倒した野犬の肉料理に違いないだろうけど。 前ページ次ページルイズ・キングダム!!
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (6)ハルケギニアの意志ある武具デルフリンガー 夜、トリステイン魔法学院、宝物庫前。 ……… 「ねぇ?ミスタ・コルベール『破壊の杖』をご存知?」 「ええ、勿論!存じておりますとも、あれは何とも奇妙な形をしておりましたなぁ」 「流石はミスタ・コルベール、他にはどのような、」 「いやいや、『破壊の杖』は勿論素晴らしい宝物です。しかしですな、これはまだ未発表なのですが、先日から私が研究している『禁断の剣』、あれが『破壊の杖』をも凌ぐ武器だと分かったのです!」 「へ、へぇ…そうなのですか、それは一体どのような」 「今日はもう遅いですし、明日、昼食の時にでもお話しましょう。ご予定などはありますかな?」 「い、いえ、ありませんが…」 「それは結構!ささ、今夜はもう遅いですから、送っていきましょう!」 「いえ、すぐそこですから…」 「最近は怪盗が出るそうですぞ!遠慮なさらず!」 「いえ、ですから……」 こうしてコルベールは見事ロングビルとの昼食の約束を取り付けたのであった。 虚無の曜日。 「街へ行くわよっ!」 自室で、ルイズがウルザに向かって宣言する。 「………急だが、何か入り用なのかね。」 応えるウルザは机に向かって何かを製作中である。 どうやら先日から作っていたものを、今はコルベールと共同製作という形で進めているらしい。 「武器よ、貴方用の武器を買うわ」 「武器……私はメイジなのだが、なぜそのような物を買うのか教えてもらいたいな」 「貴方が魔法を使うととんでもないことになりそうなのと、手加減ってものを知らないからよ!」 先日、この使い魔メイジとギーシュとの決闘は、ギーシュが灰色熊に殴り倒されるという結果で終わった。 その後ギーシュの意識が戻らなかったのだが、モンモランシーの手厚い看護の末、三日後に目を覚ました。 結果としてギーシュとモンモランシーの絆が深まったのは雨降って地固まったということなのであろうが、今の問題とは関係が無い。 問題は、ウルザというこの男がドットメイジ相手に大人気ないくらいにこてんぱんにしたということである。 決闘の夜、ルイズがウルザを問い詰めたところによれば、彼は本来「アーティファクト」と呼ばれる魔法と機械の融合したようなものの扱いを得意としており、それに比べれば魔法などは手習い程度であるらしい。 そして、魔法を使った手加減が苦手というのも本当のようだ。 彼なりに手加減のつもりで、召喚したらしい熊は、本能のままギーシュを殴り飛ばしたというわけだ。 勿論、彼が手加減するつもりでも熊は手加減なんてしないだろう。 (そもそも!使い魔なのに召喚魔法って何様よっ!) 「だから!貴方には剣を持ってもらうわ!」 「だから、なぜそう繋がるかを説明してもらえないかね?ミス・ルイズ」 「魔法が手加減出来なくても、剣なら出来るでしょう!ただの力加減なんだから!それに貴方に魔法を使わせるよりは貴方に武器を持たせる方がずっと安全だわっ!」 「……そういうことなら仕方あるまい、では支度を済ませるので暫し待ちたまえ」 「タバサッ!タバサってば!お願い!助けて頂戴!」 「………」 「出かけるわよ!早く支度をしてっ!」 「…何?」 「おじさまがルイズに連れられて街へ行っちゃったの!今日こそはデートに誘おうと思ってたのに!だから追いかけるのよっ、おじさまをルイズ一人に独占させたりはしないわっ!それには貴女の協力が必要なのよタバサっ!」 「………分かった」 「ありがとう!タバサ!おじさま!待っててください、キュルケは今お側に参りますわっ!」 「ほう、これがトリステインの城下町かね…」 「ええ、ブルドンネ街はトリステインで一番大きな通りよ」 「中々ににぎわっている様だね」 「スリも多いですから、気をつけて頂戴ミスタ・ウルザ」 「目当ての店は分かっているのかね?ミス・ルイズ」 「…ええ、こっちよ」 「へーい、いらっしゃーい」 二人が入ったのは裏通りにある武器屋であった。 「へ、はい!貴族様!うちは全うな店屋で、お上に目をつけられるようなことは…」 「今日は客として来たのよ、彼に持たせる剣を見繕って頂戴」 「では、こちらなど如何でしょう?美しい彩飾が施されたレイピアにございやす」 「あら、キレイな剣ね。でも随分と細い剣なのね、折れちゃいそうだわ」 「へへぇ、それは最近貴族様に人気の剣でございます」 「貴族に人気?どういうこと?」 「昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たせるのが流行っておりましてね。 その際にお選びになるのがこのように綺麗な剣でさあ お客様方もそれで剣を買いにいらっしゃったんじゃ無いんですかい?」 「違うけど……なんでそんなことが流行ってるのよ?」 「へい、何でも城下町を盗賊が荒らしておりやして…」 「………ふーん」 ここで後ろに控えていたウルザが口を挟んだ。 「いや、駄目だな。この剣は耐久性に問題がある。それに精製工程や組成にもだ。 装飾にも粗が目立つ、これでは武器としても飾りとしても二流と言わざるを得ない」 ぽかーんと口をあける二人。 「あんた、妙なところに拘るのね…」 「お、お客さん!それは無いですぜ!それはうちの取っておきでさぁ!」 「駄目なものは、駄目だ」 「そうね、本人がそう言っているんだから、別なのを用意して頂戴。大きくて太いやつよ」 「どーぞ、これが店一番の業物でさぁ」 「へえ、これは確かにご立派ね」 「こいつを鍛えたのはかの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で、魔法がかかっているから手伝って一刀両断でさぁ」 「ふむ、確かにエンチャントはかかっているな………剣としての完成度も先ほどよりは良いようだが………」 「ッネクラメイジが、ちょっと目利きが効くからってイッパシの口きくんじゃねぇ。 剣も振ったこと無いようなメイジが、武器にいちゃもんつけるなんざ、ふざけんじゃねぇよ!」 「おいこら!デル公!お客様になんて口ききやがる!静かにしやがれ!いつもいつも商売の邪魔しやがって!」 「へっ!てめぇの売り方にはヘドが出るぜっ!」 店主が声をかけたのも特価ワゴンセールであれば、返した声もワゴンセールからであった。 「ほう、これはインテリジェンスソードか」 「ちょっ!インテリジェンスソードって意志を持つ魔剣じゃない!なんでそんなものがこんな場末の武器屋のワゴンセールに入ってるのよ!」 「ミス・ルイズ、この剣にしよう」 「ええ!そんな簡単に決めちゃっていいの!?」 「多少の経年劣化は見られるが、この程度ならば武器としての機能に問題は無いだろう」 「そう言うなら……これ、頂くわ」 ウルザがワゴンセールからデルフリンガーを引き抜いた。 「……おでれーた、てめ、メイジの癖に「使い手」か!?」 「ほう、分かるとは、実に興味深い」 ウルザが色眼鏡越しにじろじろとデルフリンガーを観察する。 「おめぇ………まあ、いいか、よろしくな、相棒!!」 おでれーた、おでれーた、相棒はおっかねぇなあ ―――デルフリンガー 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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前ページ次ページBRAVEMAGEルイズ伝 第一章~旅立ち~ その3 キュルケおねえさま 「……あ~~~~~~っ!よく寝たぜ……」 寝袋から這い出て、見慣れない部屋だなとあたりを見回す。 そうか、召喚されたんだったなと思い直し目をパッチリとさせる。 召喚主であるルイズはまだぐうぐうと寝こけていた。ムサシは早起きである。 「おーい、ルイズ。朝だゼ」 「んんぅ~……」 ねぼすけのご主人に起きる兆しは見られない。 持ち物の中にあるすっきりミントSでも使えばたちどころに目覚めるだろう。 だがこの世界では手に入らない品だろうし、第一もったいない。よって却下。 かつてヒゲじいとレバンからもらったムサシの腕時計を見てみる。 たしか、起こせと言われた時間にはまだ早い。 それにムサシのそばには昨晩脱ぎ捨てたルイズの下着を含めた衣服類が。 「やれやれ、村長の仕事だってこんなに退屈じゃなかったぜ……しょーがねえ、さっさとすませるぜ」 かつてのオサメル村長代理を務めたムサシでも、洗濯をやることになるとは考えていなかった。 溜息まじりに衣類を持って部屋のドアを開ける。 「って言っても……、おいらこの建物のことなーんも知らねえしなぁ」 だだっ広い廊下を行くムサシには生徒や教師の姿は見えない。 まだ早朝なのだ、無理もなかった。 どうしたものかと歩いていると、目前によたよたとなにやら大きなカゴを持った人が歩いているのが見えた。 所謂お手伝いさんであろうか、そういえばヤクイニックにいたときには見かけなかったなと思い出す。 「おうい、おはよう!」 「きゃっ!」 後ろから声をかけたものだから、びっくりしたのか持っていた洗濯カゴを取り落としそうになる。 すんでのところでムサシが支えて落下を免れた。 「おっと、すまねえ!びっくりさせちまったみたいだな」 「あ、いえ…あれ、子供……?」 きょとんとしたどんぐり眼でメイドはムサシを見つめた。 わずかにそばかすが散ってはいるが、人当たりの良さそうな顔立ちをしている。 奉公人の服がよく似合い、ルイズとはまた違った健康的な体形。 座り込んだまま、やがて合点が行ったようにああ、と頷いた。 「あなたが、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう坊や?」 「へえ、もうおいらのこと知ってんのかい」 「噂になってたわ、召喚の魔法で人間の子供を喚んだって……」 「子供じゃねえぜ。おいらはムサシ!よろしくな!」 「ムサシくん、なんだか不思議な名前。私はシエスタっていうの、よろしくね」 ムサシは歳の割にゴツゴツした手を差出し、にっと白い歯を見せて笑う。 シエスタはその邪気の無い笑顔に同じく笑顔と握手で答えた。 「シエスタ、悪いけど洗濯はどこでやればいいのか教えてくれないかい?」 「あら、どうしたの?」 「ルイズの服を洗うのも、使い魔の仕事として当たり前なんだとよ」 「まあ」 シエスタがくすくす笑って、ムサシ制服を持つ手に手を重ねた。 ムサシは怪訝そうな顔で見上げる。 「使い魔が洗濯するなんて、普通ないことなのよ?」 「そうなのか?」 「ええ、それは私たちの仕事だもの……」 「なんだいルイズのやつ、適当言いやがったな」 ぶつくさ文句を垂れて、洗濯物をシエスタに委ねる。 受け取った制服を大きなカゴの上に積みながら、シエスタはムサシの頭に手を置いた。 「だめよ、貴族様にそんな事を言ったら鞭で打たれちゃうわ」 「はン、ワケもなく威張るヤツに頭下げるなんておいら好かないぜ」 「うふふ、ムサシくんマルトーさんみたい」 「うん?誰だいそりゃあ」 「料理長さんよ、私たちには優しいんだけどね……」 話ながら洗濯カゴをよいしょと持ち上げようとしたシエスタの腕から、不意に重みが消えた。 ムサシが自分の身体ほどもあるそれを、軽々と持ち上げている。 「おっと、力仕事ならおいらの出番だぜ」 「わ、力持ちなのねムサシくん。じゃあ、洗濯は私がやってあげるから、お願いできるかな」 「おう、任せときな!それでマルトーさんってのはどういう人なんだい?」 ひとしきり話し込みながら、洗濯場まで案内してもらう。 ついでに、この学院の地理をある程度まで教えてもらった。 おかげで真っ直ぐルイズの部屋に帰れそうである。 「手伝ってくれてありがとう、洗濯物は私がミス・ヴァリエールの部屋に返しておくから」 「何から何まですまねえ、ありがとうな!」 手を振って駆けて行くムサシを見て、シエスタは微笑んだ。 故郷に残した幼い兄弟たちをどこか思い出させるその溌剌さが、シエスタにはうれしかった。 にこやかに手を振り返し、さあ洗濯を頑張ろうと気合を入れなおした。 「お、ここだここ。ルイズー……なんだ、まだ寝てらあ」 ムサシは、かつてヒゲじい達からもらった腕時計を見る。 そろそろ朝食の時間が差し迫っていた。 「まったくしょうがねえ」 水の巻でもあれば水をぶっかてやれたのだが、生憎ここにレイガンドは無い。 ムサシはルイズの眠るベッドの縁に手をかけた。 「ぇいやっ!」 ムサシはその剛力を以てルイズの眠るベッドを持ち上げた。 さらに真上にポーンと投げる、まるでお手玉だ。 当然ベッドの上のルイズは落下の浮遊感を味わうこととなる。 「ふにゃっ!」 「おう、起きたかい?」 「なななな、ななな」 「なんだい、まだ寝ぼけてんのか?」 「起きた!起きたからやめて!降ろせーーーーっ!」 ひいはあと荒い呼吸をしつつ地面に降り立ったベッドから転げ落ちるように退く。 キッ、と睨みつけるが涼しい顔で「おはよう」とムサシは言った。 睨みつけようとしたが時間を確認すると確かに朝食の時間がそろそろ近い。 朝っぱらからスリリングな体験をしたルイズは遅れたらどうするの、と怒鳴りかける。 しかしそんな時間も惜しい、慌てて身支度を始めた。 「ああもう急がなきゃ、ほら制服を出して」 「こいつか?」 「ほら着せて。モタモタしないの」 「おいおい、おいら女の服なんか着せたこと無いぜ」 「ああもう自分で着る!役立たずー!」 「朝っぱらからうるせえなあ」 まったく何よこの使い魔は、生意気ばっかりで何も役に立ちゃしない。 使い魔になってくれるって言ったときは少しは嬉しかったけど、役に立たないんだったら意味が無い。 やっぱりこいつを使い魔にしたのは失敗だったかしら。 「はぁ……」 「溜息なんて景気が悪いぜ」 「うるさいわよ」 支度を済ませたルイズは文句を垂れつつムサシを連れて廊下に出た。 そこで、同じく隣室から出てきた赤毛の女性と鉢合わせになる。 「おはよう、ルイズ」 「……おはよう、キュルケ」 「で、でけぇ」 でっかいふたご山がちょうど頭の上くらいの高さにそびえていた。 ムサシはキュルケの顔を確認するために2、3歩下がらざるを得なかった。 無論この"でけぇ"には身長、体格その他諸々を含めて言った言葉だったのだが、キュルケはどこか勝ち誇った笑いを浮かべる。 「それ、あなたの使い魔?」 「そうよ」 どこか敵意の篭もったやり取りにムサシはなんとなく察する。 この2人はコジローにとっての自分みたいなものなのだろう、と。 ちなみに、敵対心が一方だけひどく強いというのも合致してある意味的を射ている。 やがてルイズとムサシを見比べたキュルケが笑い出した。 「あっはは、使い魔に子供を召喚するなんて。あなたらしいわルイズ」 「うるさいわね」 「私はね、すっごいのを喚んだのよ。もちろん、誰かさんと違って一発で成功したわ」 「あらそう」 嫌悪感を隠しもしない表情で存在な返答を返すルイズに構わずキュルケは一方的に話し続ける。 手招きをすると、部屋から大きなトカゲが現れた。 「使い魔にするならやっぱりこういうのがいいわよねーフレイムー」 大きな身体に真っ赤な皮膚、そして燃え盛る尾の先端。 ムサシは火トカゲを始めて見るが、大きさと火以外は案外普通だ。 王国でおかしな生き物や兵器とチャンバラした歴戦の勇士には動じるほどのことでもなかった。 「これ、サラマンダー?」 「そうよー、火竜山脈のね。好事家に見せたら値段なんかつけらんないわよー」 暑そうにも関わらず頬ずりするキュルケをルイズはひどくうらやましがった。 唇をぎゅっと噛み締めるご主人に対しムサシはしげしげとフレイムを眺めている。 「ずいぶん人懐っこいなあ」 「あら、よく見たらけっこうカワイイじゃない、もみ上げが男前よ坊や」 流し目を送り、自分の魅力を最大限に研ぎ澄ませて色香を放つ。 酒場のママと呼ばれていたタンブラーさんを思い出した。 ムサシにじり寄ってくるキュルケに対し、ルイズは目の前に立ちふさがって胸を張る。 キッと睨みつけるも胸を張り返されてルイズは少なくない精神的ダメージを受けた。 「ひ、人の使い魔に色目使わないでよ!ツェルプストー家の人間はやっぱり浅ましいったら!」 「おおこわいこわい」 ウフフと笑って軽くいなすその様子は、やっぱりからかわれてるんだなとムサシは思う。 自分もコジローに対してこういう風に振舞っているフシがあるのでルイズの援護にも回れずムサシは苦笑する。 それを自分に対する蔑みと取ったかルイズはムサシの頭に平手を叩きつけるのだった。 「ずいぶんとでっけえ食堂だなあ。ナメクジ岩だって収まっちまいそうだ」 「食事がまずくなるようなこと言わないでよ……」 長テーブルごとにマントの違う学生が、ずらりと並んで食事を待っているようだ。 ルイズは真ん中のテーブルについた、学年ごとに分かれているらしい。 学問に励んだ記憶がないムサシには、たくさんの生徒が生活している様はやはり新鮮に見えた。 「おいらの席はあるのか?」 「あんたはそこよ」 ルイズが床を示すと、そこには皿に載せられた黒パンとスープがあるだけ。 これではまるで犬か何かの食事だ。 ムッとしつつもあぐらをかき、パンを一かじりして、思わず口からこぼれ落とす。 今まで村のベーカリーで食べていた美味しいパンに慣れ親しんで忘れていた。 ムサシは、ナメクジ、風呂、そしてこのパンとかいう食べ物が大嫌いだったのだ。 だがしかし、ヨーグルトになった牛乳すらおいしくいただくムサシは食べ物を粗末にするのは嫌いなタチだ。 なので、スープでボソボソのパンを流しこんで食事とした。 だがこんなもので満たされるムサシのお腹ではない。 ムサシは何も言わずに視線と溜息を残して、のそのそと食堂を出て行った。 「……な、なによ。私が悪いみたいな顔して……生意気なのよ、あいつ」 口を厳しくしていても、ムサシの反応が薄いことに少々焦っていた。 キュルケ以外とはまともに会話したのも久しいルイズにとってムサシは唐突に得たとはいえパートナーである。 ムサシは、出来る範囲で使い魔の仕事をする、と言っていた。 元の世界に戻りたい、とは何度も口にしていたものの、それは今すぐどうこうできなさそうだったし。 ルイズの頭が冷えたころ、急に彼がこのまま戻ってこなくなったりするのでは、と思い始めた。 朝食を夢中で食べ、デザートもそこそこに食堂を後にした。 「どうすっかなあ……」 ムサシは中庭の使い魔が集まる広場の近くで、自分の荷物を開いていた。 なにやら白い塊を見つめて思案している。 「腐らしちまってももったいねえや。いただきます!」 ばくっと噛み付いて咀嚼する。 なんとも美味そうな顔でさんざん噛み締め、やがて喉を鳴らした。 「食った食った、やっぱり食うなら握り飯に限るぜ」 中に牛肉の入った、お城の料理長特製『ワギュウおにぎり』を存分に味わったムサシ。 ムサシの道具袋に入ってる食料の中で、彼の好物である『おにぎり』はこれ一つだった。 この世界にもお米があるとは限らない、おにぎりとは今生の別れかもなとムサシはしみじみ思うのであった。 そんな寂しさを背中に漂わせ、ルイズはまだ食堂にいるだろうかと廊下をとぼとぼ歩く。 すると向かいから、つい今朝方知り合った顔が歩いてきた。 「ああ、シエスタ」 「こんにちはムサシくん、顔にお米が……」 「!?今『お米』って言ったよな?」 「え、ええ」 「あるのか!?」 数分後、厨房に招かれたムサシはホカホカのおにぎりに齧りついていた。 それはシエスタの故郷、タルブで栽培されている珍味『オコメ』を蒸して丸めた、半ば餅団子のようなものであった。 だがムサシのしかるべき飯炊き指導により、これからはおいしいご飯にありつけそうだ。 マルトーともウマが合うのか、出会ってすぐに意気投合。 「腹が減ったらいつでも来い!」とまで言われて、ムサシのお腹は安泰になりそうである。 「あれ?ルイズ、もう飯食ったのか?」 「……」 ルイズと合流したとたん、なんかモジモジしたと思ったら引っぱたかれたが。 「いきなりなんだよ、ルイズ!」 「うるさい!さ、探したでしょ!授業に行くわよ!」 半ば引きずるようにして、教室へと急ぐ二人。 小さな歩み寄りは、ルイズの小さな心の揺れから、始まりを告げるのであった。 前ページ次ページBRAVEMAGEルイズ伝